公開: 2024年5月6日
更新: 2024年5月6日
現在の米国社会では、幼稚園から高校(4年制)までの教育が、義務教育とされています。幼稚園は、小学校に付属されており、小学校の7年間、中学校または準高校の2年間、そして高校の4年間が、義務教育となっています。高校教育は、職業に従事することを前提とした職業教育、または大学進学を前提とした高等教育に分かれています。これらの、義務教育に必要な経費の基本部分は、国家の財政で賄(まかな)われていますが、義務教育の質を向上させるために必要となる教育経費は、追加的な「教育税」によって賄われています。
この教育税は、地方税として住民から徴収されますが、その支出額は、学区のPTAと校長が作成する予算案を住民投票にかけて、決めます。予算案が可決しない場合、PTAは、予算を縮小して再提出します。再提出された予算は、住民投票で可決するまで続けられます。このPTA予算には、教員に支払う給与、学校の施設設備、教科書の購入費などが含まれます。このため、義務教育の質は、教育税の多い少ないによって、大きく左右されます。裕福な家庭が多い地域では、教育税収入も増えるので、教育に投入できる予算が増え、児童・生徒たちに提供される教育も良いものになります。
その意味では、米国社会の教育税は、住民の総意に基づく受益者負担の原則による、教育経費の負担となっており、質の高い義務教育を望む人々が多数を占める地域では、高い教育税が課せられ、日々の生活への支出が重要な地域では、住民の総意に基づく教育税は、必要最小限となるため、義務教育の質は低下します。この住民の貧富の格差による教育格差を是正するため、一部の大企業は、貧しい人々の多い地域に対して、特別に多額の寄付を行う例もあります。